基本ということ、その他稽古のことなどについて少し考えてみたいと思います。
私の稽古している流儀では歩法、10通りの太刀筋が基本ということになるでしょう。稽古を始めて、最初に教わり、最後まで稽古を続けていく上で重要となる。
ですが、基本だから単純ということにはなりません。歩法、十通りの太刀筋は、流儀の中核を構成している骨格であり、精髄です。ですから最初から完璧にこれらを行うことは不可能です。では、稽古を始めたばかりの初学の方はどうするべきなのでしょうか。
教わったことをできる限り丁寧に、繰り返して実行するしかないと思う。教わったばかりの時点では、真直ぐに木刀を斬りおろすことだけでも容易ではないでしょう。踏み込みと同時に腰がねじれて太刀筋が曲がることになる。一振りごとに太刀筋が変わる。そんな風になる。ですが、それを意識して丁寧に繰り返すことによって、太刀筋は一定程度安定してくることになります。
この段階で初めて、木刀の振り方について、あそこが悪い、ここはこうしたほうがいいといった指導が可能になってくる。木刀を振るたびに太刀筋が変わっている段階で、悪い点を指摘すると、その点を修正しようとして、他の場所が悪くなるということがほぼ必ず起こってくる。
ですから、基本の稽古を一人で毎日ある程度の時間行うということは、上達するためには非常に重要になってきます。
1日15分でもいいのです。少なくとも最初は、稽古で教わった太刀筋を毎日素振りして、次の稽古に備える。そういう一人稽古が必要なのです。
ところで、そういう初学の方に教えるにはどのようにするのが一番いいのでしょうか。今、私は、手取り足とり、言葉を尽くしてあのようにすべき、こうしたほうがいい、今のは手が落ちていた、などと言っています。でも、本当は素振りをしていない方にはこのようなことを言ってもあまり効果は望めないでしょう。実際、体を使ってすることを、言葉で間違いなく伝えるということは、本質的に不可能ではないかと思います。
昔は、素振りを一つ見せて、「はい、これ。」と言ったきりなにも言わないといった指導が当たり前に行われたいたようです。今の時代からすれば不親切なように思えます。でも、本当に伝えようと思ったら、こう言った方法でしか正しく指導を行うということは不可能ではないかと思うのです。体を正しく動かすイメージを伝えるために、「言語」に翻訳せずに直接表現して見せている。あとは受け取る側次第ということなのでしょう。教える側、指導を受ける側、それぞれに十分な稽古の時間があれば、こういう稽古が一番効果的なのではないかと思います。
でも、今はとにかく時間がない。仕事をしていれば労働時間は1日8時間程度、通勤時間、残業時間なども含めれば十数時間を仕事に拘束される。仕事が終われば疲労困憊して食事をしたら寝ることしかできないというような方も珍しくない。
武術をするのには難しい世の中ですね。
其の2に続く、かもしれません。
コメントをお書きください
KH (金曜日, 12 12月 2014 16:59)
是非第二章をお願いいたします。
やっていて感じますのが
「へこたれない」タフさが必要だと思いました。
tannkyuu-hiroshima (木曜日, 18 12月 2014 22:42)
コメントありがとうございます。拙文ですが其の2を書いてみましたので、ご覧ください。