「基本」考? 其の2

 前回の記事にコメントをいただきました。ありがとうございます。
 その中で、「やっていて感じますのが「へこたれない」タフさが必要だと思いました。」と、ありました。少し気になったのでこのことについて先ずは述べてみたいと思います。

  稽古をする中で、「タフさ」が必要と感じておられるという。十通りの太刀筋を稽古していて、全体がばらばらな感じがして、まとまりがなく、上達をしている実感を得られない時など、そのように感じるのではないでしょうか。実際、あり得ることです。稽古をいくらやっても成果が得られなければ苦痛を感じるでしょう。ここに、こうしたら良いとはっきり示せる処方箋はありません。理解できない数学の問題を解けと言われれば誰だって苦痛を感じる。
 そのような状態でへこたれずにやっていけば、いつかは上達するのでしょうか。
 へこたれずにやる、だけでは少し無理があると思います。タフさは必要でしょう。しかし、それだけでは続かない。少なくとも数年以上続けていくのは困難です。
 その時必要なのは、きっと自分は上達しているという実感でしょう。わずかな実感でいい。はっきりと実感できなくても、もしかしてと思えれば励みになる。ほんの少し理解できたという歓びがあれば継続できる。あとでその実感が誤っていたと判明したとしても、誤りを理解出来ること自体上達の証です 。

 しかし、一体どうすれば上達の実感を得ることができるでしょうか。いいえ、どうすれば正しく上達することができるでしょうか。
 稽古する流儀を正しく上達する。それは、その流儀の運動体系を理解し体で運用できるようになるということです。例えて言うならば、赤ん坊が言葉を覚え、その言葉で思考するようになる、そんな風に段階を追って流儀の運動体系を運用できるようになる。文章を文節、単語で区切り、区切った言葉で繰り返し話しかけると赤ん坊は自然と成長するに従って話しかけられる言葉で思考し、会話するようになる。
 もう一つ、例えば、日本語で話しているものが英語を習得しようとすると、まず英語を日本語に置き換えようとする。しかし、英語は日本語とは文法が異なる。単語のニュアンスも異なって一対一では置き換えられない。それでは正しい英語を話せるようにはならないでしょう。(私は英語を話せませんし、本当のところはわかりませんが。)
 其の1で流儀の基本は歩法と十通りの太刀筋と書きました。当会では初学の方は、まず、歩法と十通りの太刀筋を教わり稽古をします。ですが、このような稽古法は昔はなかったようです。どのような順番で稽古するのが正しいのかは私には断言できません。が、初学の方に最初から型を教えるのは、言葉のわからない子供にいきなり長々と文章で話しかけるようなものではないかと思います。最初は一つひとつの単語をゆっくり丁寧に、相手が正確に繰り返せるように何度も繰り返して話しかける必要があるのではないかと思います。

 やっぱりタフさも必要かもしれませんね。

 其の3に続く、といいなあ。

 

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コメント: 2
  • #1

    不動 (金曜日, 19 12月 2014 09:00)

    タフさ、ですか~
    タフさ=上達に至るまでの苦労、実経験の積み重ねかもしれませんね。
    ともかく初学の内は師の教えを守って限られた動き(真っ直ぐの素振り一本のみ)で
    成長プロセスを体感することが大切かも。
    あれこれ考えるより先ずはひたむきに振る、動く。
    そして小さく、少ない成長の感覚を積み重ねて、高い壁を乗り越えられるタフさを身に着ける。物事を諦めない図太さ、タフさ。生死を掛けた真剣勝負は諦めたときが最後。

  • #2

    tannkyuu-hiroshima (土曜日, 20 12月 2014 15:21)

     不動さん、コメントありがとうございます。
     何も流儀の素地がないところから始めて、わずかでも理解に達するのは初学の方には大変なことなのかもしれませんね。
     私の場合は、剣術を始めて最初に東京の合宿に参加した時に面白さを感じ、それ以来稽古自体が面白くて、苦痛を覚えたことがなかった(稽古以外ではそれなりに困ったこともありましたが、)ものですから、それほどタフさというものに必要を感じたことはありませんでした。わからないところが少しずつわかるようになり、より細かい部分に疑問を感じるようになってきて、理解が進めば進むほど考えることが増えていくようです。それを楽しく思っています。
     剣術を始めた頃に教わった十通りの太刀筋は今でも稽古の際には欠かさず行っています。それも、初めての合宿で感じた面白さを今でも思い出せるからでしょう。
     始めた頃からすでに十数年が経ち、もうすぐ二十年になろうとしています。少しは十通りの太刀筋の質が深まっているものと思いたいです。