真っ直ぐの太刀筋のこと

新陰流には古来から伝わる基本的な太刀筋(截り方)の稽古というものは本来ないのではないかと思うけども、稽古する太刀(型)を細分化していくと頻繁に出てくる太刀筋はあって特に重要な太刀筋として10通りの太刀筋を基本の稽古で教わった。最初の太刀筋は真っ直ぐに太刀を振る。十文字勝とか言っている。打ち込んでくる相手(以後打太刀と言う。)が右側であろうが左側であろうが、真っ直ぐ頭に打ち込んでこようが、身体に打ち込んでくるのであれば、真っ直ぐに撃ち落として勝つ。実際には左側に打ち込まれた場合ちゃんと勝つのは困難だけども、最初はその様に教わる。
こちら(以後使太刀と言う。)は中段、あるいは下段(無形)に構え、打太刀が打ち込んでくるのに合わせ、微妙に遅れて振りかぶり、力まず緩まず打太刀の小手を打ち落とす。振りかぶるのに合わせて前足を浮かせて、打ち下ろすのに合わせて身体を沈め、斬りおろし終わる瞬間に前足が地につく。間を置かず後足を後ろに引く。前足は重心の前に下ろすので、後足を引いてバランスをとる意味もあるが、身体を沈めるのに合わせて前足を下ろし、後足を引くことによって、打太刀の小手を捉える瞬間に、使太刀の身体が一瞬宙に浮く。そのまま打太刀の小手を打ち落とすことで、勝つ。
手の内は太刀(竹刀)の柄の握り方だけども、いわゆる茶巾絞りではいけない。手の内側、特に小指の内側から柄が浮かない様にする。肘は左右ともに落とし気味に構え、振りかぶり、打ち落とす時、一瞬たりとも肘の角度が変わらないようにする。結果として、構えた時左肘を絞っているように見えるが、脇を開けてはいけないからそうしているのではなく、肘の角度を保った結果その様に見える。肘の角度と手の内は関連していて、肘が浮けば手の内は茶巾絞りの様になる。
振りかぶる時も振り下ろす時も肘を屈伸してはいけないが、力んでもいけない。また、振りかぶる時に肩が浮くのもよくない。